結ファミリークリニックは、在宅医療や死別した親族等のサポートを行うブリーフケアを行う診療所であり、その新たな拠点として今回の建物が整備された.
この敷地は、東に大懸神社のある本宮山や尾張富士等の山並み、西に木曽川が流れる段丘の上にあり、江戸時代には名古屋城下と犬山城下を結んだ稲置街道が近くを通っている.江戸時代に整備された入鹿池により周辺は新田開発が広がり、現在も敷地の横には水田が営まれ美しい稲穂の景観を望むことができる.
これらの地理的な履歴と、日々過酷な日常と向き合う患者やご家族、スタッフのために、心が安らぎ、植物を楽しみ、時に火を見ながら語り合うことができる「集い・語らう Meadow Garden」をコンセプトとしたランドスケープデザインを展開した.
建物内のホールと連続するスペースにはファイヤーピットとロングベンチを設け、集いの場を生み出した.庭には、様々な種類の多年草・宿根草を植栽し、季節ごとに柔らかな表情を魅せる植栽デザインを目指した.
院長の実家で使われていた木材を建築に再利用したこともあり、ランドスケープデザインとしても歴史を継承していくことを重視し、アプローチには、院長の実家から引き継いだ瓦を使った「紡ぎの庭」を造った.施工段階では、「これから」の時間を過ごす第1歩として、子どもたちと石張りや樹名板の施工ワークショップを行った.